「自然のままに育てたパイナップルの味を伝えたい!」
屋嘉太助さんは国頭村(くにがみそん)にある畑の真ん中で、今年も出来上がった「自然完
熟パイナップル」を見て、喜びの笑みを浮かべた。
缶詰用が衰退し、生食用で復活
太助さんのパイナップルの品種は、「ハワイ種」と呼ばれるもの。酸味と甘味のバランスが
よく、果汁も豊富なことで有名。重さは通常 1~1.5 ㎏だ。
自然の中で育つパイナップルは、成長も収穫も株によってバラバラなので、完熟している
ものから、一つひとつ丁寧に収穫していく。
沖縄本島最北部の国頭村は、総面積約 195平方km、人口約 5000 人、面積の大部分がヤンバル
と呼ばれるジャングルになっている。那覇から車で、約 3 時間、日本全国から自然が大好き
な観光客が集まる。
沖縄とパイナップルの歴史
もともと、沖縄のパイナップルはサトウキビと並ぶ二大農産物の 1 つで、缶詰用が主だっ
た。しかし、農産物輸入自由化による海外産との競合などで、パイナップル缶詰産業は衰退
していった。
その後、1986 年に住民の一人が、本土在住の知人に完熟パインを発送したところ、たいへ
ん好評だった。これが、生果パインの栽培・販売の始まりだと言われている。しかし、大き
さを重視していた缶詰用に比べ、生果では味にこだわる必要があったために、生果パインへ
の転換には、当時の農家さんたちの大きな努力があった。
「自然に近い状態で作物を育てたい」と農家に転職
太助さんは、宮崎の大学で農業について学び、卒業後、県内の役場へ就職し農林関係の部
署に配属された。仕事を通じて日々農家を回り、話を聞いていた。そんな中で、安定的に供
給するために、肥料や除草剤、ホルモン剤等が多く使われていることを目の当たりにした。
「どうにかそのような薬等を使わずに、自然に近い状態で作物を育てることができないだろ
うか」と考えた太助さんは、公務員を辞職し、農家へ転職した。
太助さんは正規のギフト用も生産しているが、自然農法にこだわった結果、規格外のもの
も数多く出てしまう。
一般的な沖縄県産完熟パイナップル(ハワイ種)は、お土産店では 1 個あたり 800 グ ラ
ム~1.3 キロが 1350 円程度で販売されている。
しかし、一個あたり 800 グラム以下は規格外とされ、主に加工用として 1 個 100 円以下
の安価で取り引きされている。糖度・味・香りともに規格品と変わらないのに・・・。しま
いには、捨てられてしまうものもある。
ちびっこで葉がないのには訳がある
どんな野菜もそうだが、流通の対象になるのは、大きさと形だ。それが整わないと、
味は良くても「規格外」とされる。また、コストを低減するため、作業効率も大事だ。
収穫時期がずれれば、効率が悪いので、多くの農家は植物成長調整剤を使っている。しか
し、太助さんは使わない。農薬も除草剤も使わない。それだけ手間がかかる。
日本の中で、ホルモン剤等の薬を使わずに自然のなかで育つパインを食べたことがある人
は、本当に少ないと思う。たとえ作業(草刈り等の管理)が大変だとしても、子どもから大
人まで安心して食べられる自然完熟パイナップルを国頭村の僕の畑から発信していきたい」
という。
また、配送する際には 逆さまにしている。お尻の部分に甘味が溜まるので、逆さまの状態
で保存することで、甘味が全体に行き渡るので。
店頭で見かけるパイナップルは、見栄え重視で葉がついているが、太助さんは、葉を切り
取ってスッキリさせて配送している。農家にとって、葉は次のパイナップルの苗(種)にな
る大事なものだから。
規格外のちびっこで、葉がなくて、逆さま・・・それにはちゃんとした理由がある。太助
さんならではの「自然完熟パイン」を日本全国へ届けたいからだ。
――パイナップル栽培に対する農家さんの熱い想い、その努力を皆に知ってもらいたい!
――糖度、味、香り等「規格品」とそん色ない「少し訳あり」パイナップルをきちんと評
価してあげたい!
そのような想いから、農家の努力やパイナップルに光を当てることができる方法として今
回、ゆいトレに登場することにした。
『本当に誰もが、安心して食べられるものを。ご家庭に。届けたい・・・』
『一つひとつ丁寧に収穫し、時間とコストはかかるけれども、自然のままで育つパイナップ
ルのおいしさを知りたいと思って頂ける人に食べてもらいたい!』
どうぞ、このヤンバルで育った「自然完熟ちびっこパイナップル」をご賞味ください。
(取材記者・山崎)