「"物を売るってことは、お客様に寄り添うことだ"ってわかってからこの仕事が楽しくなった」
兵庫県伊丹市のアジア雑貨店・ラフエイジアの太原佑三子さんは、満面の笑顔でそう言い切った。
交差点の角に、ポツンとたたずむ雑貨店。店内には服やアクセサリー、台所用品などが所狭しと並んでいる。佑三子さんは5歳上の姉、上田真理子さんと店に立つ。
開店は2002年。祖父母がやっていたパンや菓子を売る店を引き継いだ。真理子さんが5年間ほどタイに住んでいて、現地で仕入れた雑貨を売ることにした。
伊丹の中心商店街から1キロ、JR伊丹駅から500メートル離れ、立地もよくないことから、当初はお客様も少なかった。徐々に常連客が増え、さらに2006年からネット通販も始めて、軌道に乗った。今は売り上げの半分がネット通販だ。
仕入れ先は主にタイ。最近はインドも開拓中。以前は毎回仕入れに行っていたが、今は関係も深まり、配送業者に商品を集めてもらっている。それでも現地に赴くと新しい商品に出会えることもある。
店のおすすめの商品は、カンタ刺のバッグ。母親が嫁入りする娘に贈るために作っていたという刺子の布で作ったもの。何百回も針を刺して作るのは、気の遠くなるような作業だ。そして現地の布が持つ優しい風合いが魅力という。
もう一つは、ザリテープで作ったカメラのストラップ。
ザリテープは、ベールの裾や、服の縁に縫い付ける幅広のテープ。「これをストラップにしたら」と思いつき、加工を頼んでいる。
「何百年も民族の中で受け継がれてきた色彩感覚、手作りの技法がたまらない魅力」と佑三子さん。
一方、ネット通販は、ファッション系ではなく、道具類が人気。
なかでもZEBRAブランドのステンレス製の弁当箱はベストセラーだ。取っ手を延ばすと鍋に変身する。機能性とシャープなデザインにファンも多い。
佑三子さんは、創業当時、「カリスマ店長」を目指していた。自分が選んだ商品がどんどん売れるというイメージだ。
しかし、続けているうちに、「お客様と同じ目線で」「寄り添うように」と考えると気楽になった。
3年前、商品を仕入れているとき、色遣いを見て「これは、あの人の好みにぴったり」というバッグを見つけた。それはドンピシャだった。想定通り、常連の50代の女性が「こういうの欲しかったの」と買ってくれた。
「あの時は、お店をやってて本当によかったと思った」と笑顔がはじける佑三子さん。
一番びっくりしたのは、たくましい男性がやってきて、ドレスをあれこれと見て、「サイズが合わない」とぶつぶつ。どうやら彼は女装のためにドレスを探しに来たようだった。
「でも、色合いとか素材とか、『こういうのを着てみたい』と思ってくださったのはうれしかった。」
今はほとんど女性用の商品だが、今後は男性用も増やしてきたいという。
最近、タイ料理の教室との連携を始めた。パクチーブームでタイ料理への関心が高まっているからだ。
「単なる商品販売でなく、文化も含めて紹介して、ファンを増やしたい」という。
お店の面白さは、ディスプレーを変えるだけで、売れ筋が変わること。目に留まらなかった服をマネキンに着せたらすぐに売れたこともあった。
一方で、初めてのお客様への対応は今も試行錯誤。「どのタイミングでお声を掛けさせていただくか、今も悩むことが多い」という。
でも、きっかけがつかめて、いろいろ知っていることを話すと、興味をもってリピーターになってくれるお客様も少なくない。
お店を始めて15年、「物を売る店」ではなく、「お客様とのコミュニケーションを楽しむ場」になってきたようだ。
(取材記者:坪田知己)
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